EV・PHVを知ろう EV・PHVの基礎知識や魅力を解説します

EV・PHVはすごい

皆さんはEVに乗ったことがありますか?
なければ、ぜひ一度乗ってみてください。できれば運転をしてみてください。

これまでのエンジン自動車の常識が通用しない、ということはなかなか言葉では伝えることができません。「百聞は一見にしかず」です。

エネルギー補給

EVとガソリン自動車の大きな違いのひとつに、エネルギー補給の方法があります。

ガソリン自動車では、専用のガソリンスタンドに出かけていって、そこで燃料を補給する必要がありました。

しかし、EVのエネルギー源は電気。現在の日本で、自宅に電気が通っていない家庭はまずありません。つまり、自宅にいながら燃料補給(充電)ができるのです。
※ただし、電気自動車に充電するためには、専用の充電設備が必要となります。

EVに乗って出かけて、家に帰ったらコンセントにつないで充電し、次の朝には満タン(フル充電)になっています。携帯電話の充電と同じと考えると、イメージしやすいでしょうか。

また、自宅以外にも、充電設備が設置された商業施設やホテル、駐車場などであれば充電することができます。

1ヶ月の電気代は?

でも、家庭で充電するとなると電気代が気になりますね。計算してみましょう。

結論から言いますと、EVはガソリン自動車に比べて半分以下の費用で済みます。
1ヶ月600km走行する場合で、およそ3,000円(1km当たり約5円)になる計算です。もし深夜電力を契約している場合はさらに安くなり、およそ1,000円(1km当たり約1.6円)になります。

詳しい計算条件などは「お得情報 “どのくらい燃料費が削減できるの?”」をご覧ください。

EVのエネルギー効率

ガソリン自動車では、走行した後にボンネットを開けるとムワッとした熱い空気が顔に吹き付けてきます。手を出そうものなら火傷してしまうほど、エンジンルームは熱くなります。

一方、EVでは走行直後にボンネット開けても熱を感じません。顔を近づけてようやく「ほんのり暖かいかな?」という程度です。
この違いは何を意味するのでしょうか。

エネルギーを無駄にしない

「熱」というのは“無駄になったエネルギー”です。つまり多くの熱が発生するということは、消費したエネルギーがたくさん無駄になっているということを意味します。
ガソリンエンジンが自動車を動かす力を生み出すのに、燃料のガソリンが持つエネルギーの20%程度しか使うことができません。残りの80%近くは熱に変わってしまって、無駄になっています。
一方、EVではバッテリーに蓄えられた電力を、モーターによって動く力に変えていますが、90%近くを使うことができます。熱として無駄になるのはわずか10%程度です。

参考情報:
電気自動車の開発と自動車の環境効率評価(独立行政法人国立環境研究所)

同じエネルギーで走れる距離を比較

Well to Wheelでは正確な比較が困難なので、米国の環境保護省(EPA)が採用している「燃費ラベル」の値を使って、ガソリン自動車とEVのエネルギー効率を比較してみます。
「1リットルのガソリン(に相当するエネルギー量)で何キロメートル走行できるか」という尺度を使用します。

EPAの測定基準では、高速道路での走行やエアコンの使用などが含まれており、日本の10・15モードやJC08モードに比べて、より実際の走行に近い値になっています。 また、ガソリンや電気、天然ガスなど、動力源が異なる場合でも比較できるよう、「同等のエネルギー量に相当するガソリン量」に換算した値も公表されているのが特徴です(ガソリン1ガロンと電力33.7kWhが等しいエネルギー量と定義されています)。

ガソリン自動車である日産ティーダの燃費は30MPG(マイル毎ガロン、およそ12.8km/L)です。

一方、EVである日産リーフの燃費は99MPGe(マイル毎ガロン相当、およそ42km/L)です。

同じエネルギー量を使った場合、EVはガソリン自動車の3倍以上の距離を走行できます。つまり、EVの方が3倍以上エネルギー効率が良いことになります。

参考情報:
Fuel Economy(米国エネルギー省)
ティーダ(米国名:Versa)の燃費ラベル(米国エネルギー省)
リーフの燃費ラベル(米国エネルギー省)

EVの乗り心地

確かにEVの価格を見ると高級車並みですね。しかし、そういうことではありません。 高級車の条件は何でしょう? 人によって異なると思いますが、共通するのは以下の3つではないでしょうか。

  • 静粛性
  • 加速性能
  • 走りの安定性

EVはこれらをすべて兼ね備えていますので、高級車並みの走り心地を楽しめるというわけです。実際、EVに乗り始めるともう二度とエンジン車には引き返せない、という声も多いようです。

静粛性

EVの特徴はなんと言っても静かなこと。エンジンの音や振動が無いためです。
音もなく滑るように走り出すため、中には「気味が悪い」と言い出す人もいるほど、エンジン自動車とはかけ離れた感覚です。

高級車ではエンジンの気筒数を増やしたり、防音素材をふんだんに使用するなどして、静粛性を高めています。そのことも高級車の値段が高くなる要因のひとつです。

コラム:EVの「音」

EVの「静かさ」が問題となることがあります。あまりに静か過ぎるため、歩行者がEVの接近に気づくことができないということです。道を歩いていて、後ろから来た自転車が自分の側を駆け抜けていってびっくりした、という経験はありませんか? EVの問題もまさにこれと同じです。そのため、国の規制によりEVは「車両接近通報装置」の装着を義務付けられています。

参考情報:
走行性能:安全性(三菱自動車)

加速性能

EVに乗った人が次に驚くのが「加速の良さ」です。

発信時にアクセルを踏み込むと予想外の強い加速で、体がシートに押し付けられます。

例えば、日産リーフに搭載されているモーターの出力は、1500~1800ccのガソリンエンジンに相当しますが、加速性能に関して言えば3000ccに匹敵すると言われています。 これもEVの動力であるモーターが持つ性質によるものです。

例えば、自転車で停止状態から走りだすときに、ペダルがとても重たいのは皆さんも経験があると思います。足の力が強ければかまわずにペダルをこいで一気に加速ができます。そうでなければ出だしはゆっくりになり、少しずつ加速します。

モーターはこの「足の力」に相当する“トルク”が、同一出力のガソリンエンジンに比べてとても大きいため、加速性能が良いのです。

参考情報:
モーター(日産自動車)

走行安定性

走行安定性にはいくつもの要因がありますが、ここでは「重心」について取り上げます。

エンジン自動車の場合、もっとも重たいエンジンは車両の前方か後方に配置するしかありません。真ん中には人が乗るスペースが必要だからです。そのため重心はどうしてもエンジンのある側に偏ってしまいます。

一方、EVでは一番重たい部品はバッテリーです。バッテリーは比較的自由に形を設計することができますし、ほとんど発熱しないため、座席の下に配置することが可能になっています。このため、車両の重心を中心部に近づけることができます。しかも、車両の床下という低い位置に重心があります。 このため、EVは走行時の安定感が増すことになります。

他にも、ギアによる変速が必要ないため、非常に滑らかな走りを実現できるなど、EVは走り心地が良くなる特性を有しています。

参考情報:
日産のサイト 走行性能

EVの可能性

EVはエンジン自動車に比べてデザインの自由度が高いと言われています。
エンジン自動車の場合、その廃熱の処理(冷却水やラジエータ)や排ガスの処理(マフラーなど)で多数のパイプがあるため、どうしても部品の配置に制限があります。

しかし、EVでは主要な部品であるモーターとバッテリーとインバーターは電線でつながっているだけなので、それらを自由に配置することが可能です。

特に、「タイヤ自体がモーター」とも言えるインホイールモーターを使用すると、その可能性は大きく広がります。

参考情報:
技術・開発(SIM-Drive)

縦横無尽に走るEV

インホイールモーターを活用してEVの可能性を広げた例として、日産のPIVO2やトヨタのi-unitをご紹介します。

タイヤ自体がモーターなので、タイヤに動力を伝えるシャフトが必要ありません。なので、タイヤを自由な角度に方向転換させることが可能になります。

また、インホイールモーターならば4つの車輪をそれぞれ別な方向や別の速度で回転させることができるので、左側のタイヤを前進、右側のタイヤを後進させてその場でくるりと時計回りに反転する、という従来の自動車では考えられないような運動も可能になります。

参考情報:
コンセプトカー PIVO 2(日産自動車)
i-REAL & i-unitが描くパーソナルモビリティの世界(YouTube)

用途に合わせた最適なデザイン

デザインの自由度が高いことを活かし、それぞれの用途に合わせた最適な「乗り物のカタチ」を追求することが可能になります。
例えば、こちらの「ロデム」は車椅子以上に使い勝手のよい乗り物として注目され、医療・介護の現場での活躍が期待されています。

最近盛り上がりを見せているのが、超小型モビリティと呼ばれる、軽自動車と原付自転車の中間となる、最高時速60km/h以下、2人乗り程度の乗り物です。

「ちょっとそこまで買い物に」とか「病院までの送迎に」といった近距離、少人数での利用を前提としており、今後の高齢化社会で需要が増えると見込まれています。

参考情報:
興和テムザック、ロデムの移乗方法を継承したマイクロEVを開発へ(ロボットポータル-ロボナブル-日刊工業新聞社)
環境対応車を活用したまちづくり研究会
キーワード「超小型モビリティ」の検索結果(ダイヤモンド・オンライン)
超小型電気自動車 コムス(トヨタ車体)

コラム:改造EV

1990年代から既に「自作EV」を楽しんでいる人たちが世界中にいます。
と言っても車体から全部作っているわけではなく、エンジン自動車のエンジンをモーターに載せ替えて作る、改造EV(コンバートEVとかコンバージョンEVとも言います)です。その改造EVで車検を通しナンバーを取得し、実際に公道を走行しています。(図:コンバートEVの概念図、改造車の写真)

日本では、「日本EVクラブ」という、改造EVを楽しむ人々の集まりがあります。自作の改造EVでレース大会を開いたり、全国から改造EVで(何泊もしながら)走行して集まるお祭りを開いたり、といった活動をすでに15年以上続けています。

近年、この改造EVをより一般的な、身近なものにする動きがさかんになっています。
「改造EVに興味はあるけど、自分ひとりでできるか不安」とか「自分でやるのは無理だけど、持ってる車をEVに改造したい」という人々を対象に、改造を手伝ったり、請け負ったりする事業者が急増中です。

ガソリン自動車をEVに改造する利点としては次のようなものが考えられます。

  • 環境問題への貢献
    ガソリンを使わなくなりCO2排出が減る
    車体を再利用するため新車EVを買うより環境負荷が少ない(特に製鉄は大量のCO2を排出)
  • 自分の好みを追求できる
    既にあるお気に入りの車体を使用できる(車種が豊富)
    欲しい性能に合わせてカスタマイズできる
  • 経済的
    新車のEVよりも基本的に安価(車体を既に所有している場合)
    税金が安くなる場合もある

    道内では、函館バス商会、ティーバイティーガレージなどが着手しています。
  • 参考情報:
    電気自動車普及協議会のEVコンバージョン部会

コラム:自作パソコンならぬ「自作EV」

自作パソコンという言葉をご存知かと思います。CPUやメモリなど必要なパーツを購入して、自分で組み立てて、1台のパソコンを作るという、一種のホビーです。

今後EVのパーツに関しても、パソコンの場合と同じように、パーツの標準化とそれによる価格低下が進行すると予想されています。そうなると、個人でモーターやバッテリー、シャーシを購入し、自分で組み立てて、一台のEVを作ってしまう、ということも可能になることでしょう。

自分の乗りたいクルマを自分で作る。そんな未来もそう遠くはないかも知れません。